女性医師たちのあゆみ ~自伝的エッセイ~
西嶋 攝子
Second Life
2010年1月19日付の讀賣新聞朝刊の展望2010(「健康世界一」を自信に)によると、日本人は世界で最も健康的な国民であるにもかかわらず、健康への不安感が強いという不思議な一面を持つ、という記事が掲載されていた。
2009年の経済協力開発機構(OECD)データーによると、日本人の平均寿命は82.6歳(男性79.2歳、女性86.0歳)で、加盟30か国で最も長い。欧米に多い心筋梗塞による 死亡率は、最も低い。介護を必要とせず自立した生活ができる期間を示す「健康寿命」は75歳で、世界一。単に長生きなのでなく、健康で長寿なのだ。だから 自信を持って、という内容であった。
前置きが長くなったが、私は1971年に関西医科大学を卒業し、その後30年以上、ほとんどを母校を中心に皮膚科医としての仕事をしてきた。自分では生涯大学勤務医で過ごすと思っていた。しかしながら大学が附属病院の再編成を計画し、私の勤務していた附属病院が廃院となった。
定年まで6年以上を残していたが、皮膚科医以外にできる仕事もなく、遊んで暮らすには早すぎる。そこで開業することにした。それまで私の人生設計に開業の二文字はなかったのだが、“Second Life”と考えることにした。
私が皮膚科医になったころは、クラスメートで皮膚科を選んだのは私一人、顧みられることもないマイナー中のマイナーの診療科であった。それがどうであろうか。最近では私の母校でも皮膚科は(特に女子医学生に)一番人気であり、毎年入局希望者が殺到している。この傾向は全国的であって、今のところ継続的でもある。
日本皮膚科学会の最新の調査によると、女性医師の割合はこれまで長年一位であった日本眼科学会(40%) を抜いて43%と医学会中トップである。また現在30歳以下の皮膚科医の7割が女性である。
平均寿命は年々長くなっており、特に日本人の健康寿命は世界一でもある。Second LifeどころかThird Lifeも望める時代がくるかもしれない。医師となった以上、私たちは生涯その義務を果たしていくことになるのであるが、その形はさまざまである。そして これからは数度のLifeを送れる時代になるのである。“健康で長寿”を信じて、私のSecond Lifeを送りたい。